東京高等裁判所 昭和45年(ネ)696号 判決
なるほど夫が家出して不在となつた場合、夫は家出するにさいし、その重要でない日常的な財産的法律行為について、妻に代理権を与えたものと解することを相当とする場合もありうるかも知れない。しかし右歌子が当裁判所に提出した書面によつても、控訴人が訴訟代理人の選任行為を妻に委任したことは少しも明らかでなく、むしろ控訴人は借財のため他出するに当り妻に対し、たんに債権者で来る者があつたら適当に応待すべき旨いいおいたのみで、そのまま行方をくらまし、妻としても警察に搜索願を出したが、今日までその所在が不明であることが明らかである。かような場合、残された妻の立場は諒とするとしても、本件のような訴訟代理人の委任行為まで当然妻がなしうる保存行為として適法有効のものと解することはできない。けだし、これを打開するについては利害関係人において家庭裁判所による不在者の財産管理人の選任を求める等法の定める救済方法によるのが相当であるからである。
(浅沼 岡本 田畑)